親の銀行口座のパスワードがわからない|入院・相続の手続きと終活の備え

相続前の書類・名義確認

親の急な入院で、必要な通帳とキャッシュカードを探す。見つかってほっとしたのもつかの間、「そういえば、暗証番号は聞いていなかった」と気づく。そんな場面を想像してみてください。

入院の付き添いや、葬儀のあとの片付け。気持ちが追いつかないなかでも、支払いの期限や銀行の手続きは気になります。「何から始めればいいのだろう」と、心細くなることもあるでしょう。

親の銀行口座のパスワードや暗証番号がわからなくても、状況に応じて銀行へ相談する手続きはあります。 まずは、本人による再設定なのか、家族の代理手続きなのか、相続手続きなのかを分けて考えましょう。

親が元気なうちの小さな確認は、必要な手続きをなくすものではありません。それでも、いざという時の探し物や確認のやり直しを減らす助けになります。

まず、銀行の「番号」と「書類」を分けて確認する

「銀行のパスワード」と一口に言っても、次のものは役割が異なります。

  • キャッシュカードの暗証番号: ATMなどで使う番号
  • ネットバンキングのログイン情報: スマホやパソコンで口座にアクセスするためのID・パスワードなど
  • ワンタイムパスワードやアプリの認証: 振込などを承認するための仕組み
  • 通帳・届出印: 窓口の手続きなどで確認するもの。Web通帳や印鑑レス口座もある

そして、手続きの分かれ目になるのが、親本人が内容を理解し、自分の意思を伝えられるかです。

親の状況 まず相談・確認すること
本人が内容を理解し、手続きできる 本人が再設定方法を確認。子どもは案内を読む、付き添う、書類を探すなどを手伝う
入院中などで来店できないが、意思は伝えられる 来店以外の方法や、銀行所定の代理手続きが使えるか相談する
意思確認が難しい 本人の医療費・生活費など、支払いの目的と事情を銀行へ説明する
すでに亡くなっている パスワード探しを続けるより、銀行へ相続手続きを相談する

「家族だから」「カードを持っているから」で、本人と同じ手続きができるとは限りません。全国銀行協会も、預金の引き出しには原則として本人の意思確認が必要と案内しています。全国銀行協会の案内

親が自分で手続きできるうちは、再設定を一緒に確認する

親本人が手続きの内容を理解し、意思を伝えられるなら、まずは取引銀行の公式サイトや窓口で再設定方法を確認します。

子どもは横で案内を読む、必要な書類を一緒に探す、窓口へ付き添う。親の代わりにすべて操作しなくても、手伝えることはあります。

キャッシュカードの暗証番号を忘れた場合

たとえば三菱UFJ銀行では、キャッシュカードの暗証番号について、インターネットバンキングまたは本人の窓口来店による再登録を案内しています。窓口での持ち物は、キャッシュカード、本人確認書類、届出印などです。印鑑レス口座では届出印は不要です。三菱UFJ銀行の暗証番号に関する案内

ただし、これは同行の一例です。来店前に次の4点を確認しておくと、持ち物不足などによる出直しを減らせます。

  1. この口座・カードでは、どの再設定方法を使えますか。
  2. 本人の来店は必要ですか。
  3. 必要な持ち物は何ですか。
  4. 予約・手数料・郵送での受け取りは必要ですか。

ネットバンキングにログインできない場合

公式サイトの「パスワードを忘れた場合」などの案内から、本人が再設定します。

ここで確認したいのが、銀行に登録した電話番号を、今も使えるかです。三菱UFJ銀行の案内では、登録電話番号で認証を受けられない場合、電話番号の変更手続きが必要になることも示されています。三菱UFJ銀行のログインヘルプ

パスワードだけを確認するより、登録した連絡先が古くなっていないかを本人に見直してもらうことも、備えになります。

入院中・意思確認が難しい時は、支払いの目的を銀行に伝える

入院している場合も、本人が意思を伝えられるかどうかで相談の進め方が変わります。

本人の意思確認ができるなら、たとえば次のように伝えます。

本人は入院中で来店できませんが、手続きについて意思を確認できます。家族が手伝うには、何が必要ですか。

代理取引では、本人や来店する家族の確認、委任関係を確認する書類などが必要になることがあります。委任状が一枚あれば、どの銀行でも同じ手続きができるわけではありません。三菱UFJ銀行の取引時確認に関する案内

本人の意思確認が難しい場合は、入院費などの請求書を手元に置き、誰の・何の費用を・いつまでに支払う必要があるかを説明します。

全国銀行協会は、本人の意思確認ができず、本人の生活費・入院費・介護施設費用などの支払いに困っている場合、まず取引銀行へ相談するよう案内しています。ただし、相談すれば必ず家族が引き出せるとは限りません。全国銀行協会の案内

継続して財産管理を支える必要がある場合は、成年後見制度なども検討対象になります。家族が自動的に後見人になるわけではなく、家庭裁判所の手続きが関係します。裁判所の成年後見制度に関する案内

親が亡くなったら、パスワードより相続手続きを相談する

親が亡くなった後は、暗証番号を見つけても、家族が本人として使い続けるのではなく、銀行へ相続発生を連絡します。

銀行が死亡を把握すると、原則として口座の取引が制限され、相続に応じた手続きが必要になります。書類の例は次のとおりです。

  • 亡くなった方と相続人の関係が分かる戸籍関係書類など
  • 手続きする人の本人確認書類や、必要に応じた印鑑証明書
  • 通帳・キャッシュカードなど
  • 遺言書や遺産分割協議書など、その相続に応じた書類

必要書類は、遺言の有無や手続きする人などによって変わります。葬儀費用などで急ぐ時には、遺産分割前の相続預金の払戻し制度を利用できるか、銀行へ相談する方法もあります。三菱UFJ銀行の相続手続き・払戻し制度の解説

パスワードがわからなくても、正規の相続手続きを相談できます。反対に、パスワードを知っているだけで相続手続きが不要になることはありません。

引き落としや年金の入金など、口座全体の整理については、親の口座を整理する前に確認することも参考にしてください。

終活で確認しておくと、どれだけ負担を減らせる?

事前に確認していても、本人確認や相続に必要な手続きは残ります。「何日短縮できる」と一律に言うことはできません。

それでも、準備によって減らしやすくなる負担はあります。銀行へ相談する前の、探し物と確認のやり直しです。

確認していない時に起こり得ること 元気なうちに確認しておくと
どの銀行か分からず、まず実家で書類を探す 銀行名・支店名から相談を始められる
通帳や届出印の場所が分からない 本人に了承された保管場所を確認できる
再設定の途中で、古い電話番号が登録されていると気づく 本人が連絡先を見直しておける
家族が何を手伝えるか分からず、相談をやり直す 以前相談した制度や条件をもとに確認できる
兄弟姉妹がそれぞれ銀行へ問い合わせる 家族の窓口役と共有範囲を決めておける

たとえば、親が入院して銀行へ行けなくなった場面を考えてみてください。これは段取りを説明するための想定例です。

銀行名も通帳の場所も分からなければ、まず書類を探し、家族に問い合わせるところから始まります。一方、銀行名と保管場所、以前相談した内容がメモに残っていれば、「今の状況でも、この手続きは使えますか」と確認を始められます。

必要な手続きをすべて省けるわけではありません。それでも、探し物と確認のやり直しが減れば、その時間を、親の話を聞くことや、付き添う家族が休むことに使いやすくなります。

親が元気なうちに確認したい5項目

残高も暗証番号も、最初から全部聞く必要はありません。本人が了承できる範囲で、まずは次の5つから始めてみましょう。

  • 普段使う銀行名・支店名と、口座のおおまかな用途
  • 紙の通帳があるか、Web通帳やネット銀行を利用しているか
  • 通帳・カード・届出印などの保管場所と、家族が確認してよい範囲
  • 銀行に登録した住所・電話番号が今も使えるか
  • 困った時に相談する銀行の窓口と、家族の連絡担当

家族で共有する一覧に、暗証番号・ログインパスワード・ワンタイムパスワード・復旧コードをまとめて書き込む必要はありません。 認証情報の管理は、本人と銀行の案内に沿って別に考えます。口座の一覧も、本人が決めた相手だけに共有してください。

銀行によっては、独自の代理人制度などを提供しています。元気なうちに「来店できなくなった時、家族がどの取引を手伝えるか」を一緒に相談しておく方法もあります。利用条件や対象の取引は銀行・制度によって異なります。全国銀行協会の事前準備に関する案内

よくある質問

暗証番号を何度も間違えるとロックされる?

一定回数の誤入力で利用が停止されることがあります。停止条件や解除方法は、銀行・サービスによって異なります。たとえば、ゆうちょ銀行ではキャッシュカードのロックについて、アプリによる暗証番号再登録も案内しています。推測で入力を繰り返さず、取引銀行の公式案内を確認してください。ゆうちょ銀行の公式FAQ

親のカードで家族がATMからおろせる?

暗証番号を知っているだけでは、家族が利用できるとは判断できません。本人の意思に加え、銀行の規定や代理人手続きを確認してください。三菱UFJ銀行にも、所定の届出に基づいて発行する代理人カードの規定があります。三菱UFJ銀行のキャッシュカード規定

親が亡くなった後は、銀行が死亡を把握しているかどうかにかかわらず、相続手続きの窓口へ相談しましょう。

親が認知症になったら、口座はどうなる?

本人の意思確認ができるか、どのような取引が必要かによって対応が異なります。まず取引銀行へ相談し、必要に応じて銀行の代理制度や成年後見制度を検討します。全国銀行協会の案内

パスワードが不明でも相続手続きはできる?

できます。銀行に相続発生を連絡し、案内された書類をそろえて進めます。暗証番号やネットバンキングのパスワードを探し続けなくても、手続きの相談を始められます。三菱UFJ銀行の相続手続きの解説

「教えて」より「困った時のために」から始めよう

親にとって、お金の話は「自分のお金に口を出されるのでは」と感じる話題かもしれません。聞く側も、財産をあてにしていると思われたくなくて、言葉を選んでしまいます。

そんな時は、何を知りたいかだけでなく、何のために確認したいかを短く伝えてみてください。たとえば、こんな声のかけ方です。

もし入院して銀行に行けなくなった時、どう手伝えばいいか分からなくて。今度、一緒に銀行で使える手続きを聞いてみる?

嫌がられたら、その日はそこで終えて構いません。残高も番号も、今日すべて聞き出す必要はありません。切り出し方に迷う時は、親の通帳・印鑑・保険のことを聞く時の進め方も参考にしてください。

銀行名を一つ知る。登録電話番号を本人に見直してもらう。困った時に誰が相談するかを決める。そうした小さな確認が、いざという時に家族が動き出す手がかりになります。

親を心配する気持ちを、本人の希望する手助けにつなげていきましょう。

口座以外の確認先も整理したい方は、親が元気なうちに確認する20項目チェックシートを使えます。無料・メール登録不要です。暗証番号やパスワードを記入するシートではなく、家族で確認する入口を整理するためのものです。

情報確認日:2026年10月20日。手続き・必要書類・利用条件は銀行や個別の状況によって異なります。実際の手続きは、取引銀行の最新案内をご確認ください。